Qualities of ナスノ

Grad student of History and Philosophy of Science, Bachelor of Public Health with emphasis on Bioethics. 医療とか情報にまつわる制度。情報の哲学を趣味にする。http://komad.tokyo/ は社会貢献

一ヶ月で対策した東大総合文化研究科 科学史科学哲学の院試

他専攻からの受験はわりと無理があったので、非推奨です。*追記訂正有:受験直後の疲れから非推奨と言った私が愚かでした。推奨します。 

勉強のスタート地点

駒場(大学1,2年)にて科学史(橋本 東大)、哲学1(石原 東大)、科学技術社会論(調 東工大)を履修済み。・3,4年時は医学部健康総合科学科にて生物統計・疫学・公衆衛生系を中心にした授業。生命倫理教室所属。・院向けの科学史(岡本 東大)に潜ったり、Visitingでスウェーデンよりいらしてたノーベル賞科学史(Lindqvist ノーベル博物館初代館長)、科学技術人類学(福島 東大)、他情報倫理やロボット倫理、進化理論などのの授業を他学部履修していました。・どこの院に進むかはギリギリまで(というか今でも)悩んでました。


勉強をはじめるにあたって参考にしたサイト

これらのサイトがあったから、外部からの受験でもあわてて対策できたようなものです。感謝。
感謝の念を示すために(そして後進が困らないように)、この記事をまとめました。
(また、東京大学 大学院 総合文化研究科 広域科学専攻の過去問は語学を除き、ウェブサイト上にて入手可能です。)

 
 
 
 

この辺の本を近所の区立図書館で借りて読みました。

対策したこと

以下の本を図書館で借りる、実際に買うなどして周回して読んでは、過去問とにらめっこしながら索引を使って完璧な模範解答を作成することに勤しみました。似た傾向の問題がいくつかでるので、そういう時はついでに過去ものもブラッシュアップしていきました。志望は東大一本だったので、実際に所属されてる教員の著作・論文に多数あたりました。

過去問を見て、「これは間違いなく退任された○○先生の出題では?」という問題については対策を見送りました。

英語はちょうど7月の冒頭にTOEFLを受けていた(そのせいでそもそも対策の時間がなかった。)ので、TOEFLitpも出題が同じだろうとたかをくくりました。(そして、当日おどろくことになります。)

2019年11月 ふと思ったので追記。
実は東大総合文化の広域科学科の試験問題は選択式で科学史科学哲学の他に生物学や物理学の問題も出ます。僕のように、いわゆる理系から受験するような人は、そっちが得意ならそっちを解くという選択肢もあります。(僕の場合は、もし選択するとしたら遺伝学と細胞構造に関係するあたりですかね。しっかり健総の授業でやったことがでます。植物とかは全然わからないですが。)しかしながら、おそらく点数一辺倒な選考をするところではないので、それがどう二次の面接に響くかは正直わかりません。
2020.6. さらにふと思ったので追記
科史科哲の院生の同級生には、文/理・実験 /理論問わず他専攻出身の人や他大学出身の人も多く、言うほど他専攻から受験は無理ではないようです。さらに孤独にやってた僕が変わり者だったようで、説明会であった院生や同じ専攻を目指すお友達と勉強する人が多いようです。

科学史について
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橋本先生の通史の科学史2冊。前者は、放送大学の元教科書ということもあり入門書として最適です。
後者は、図表に着目するという結果ちょっと視点がことなる歴史が入ってくるので併読し、科学史上の理論・モデルを理解する助けになります。

こちらは少し技術史よりです。全編が橋本先生というではなく、廣野先生の食品・水銀規制や岡本先生の原子力規制の話ものっています。STSの知識がすこしあるほうが読みやすいかもです。

必修と被って古川先生の授業を受けられなかったことが残念です。
18世紀、19世紀の科学と社会(具体的には、ヨーロッパの大学、産業、政府)を知るに最適の本です。索引が使いやすいです。廣重先生の同名の著作があります。ドイツの科学史大事。

東大岡本先生の日本の科学史、科学行政史の教科書です。明治期の話などとても面白いです。この本、めっちゃ面白いのでおすすめです。高校生のときにこれ呼んでたら、地理じゃなくて日本史選択にしてたかもです。

生命科学・生物学・医学の歴史を勉強するのには、この書籍の前半の廣野先生担当部分が大変よいです。

また後半の優生学史や環境思想史も初学者には必読です。進化理論、進化学については別書を参照してください。長谷川先生の進化心理学の書籍など良いと思います。

慶應鈴木先生の医学史です。新著でこのまま出してもいいんじゃないかというWeb連載です。ウィルヒョーやコッホのような医学史のメインどころの記述は軽めなので、(もし医術史、医学史に関心があるのならば)それについては他の書籍をあわせて読むことをおすすめします。

科学論・科学哲学

チャルマーズのかわいい猫ちゃんの本です。ものすごく科学史上の論争を引いて議論の展開を説明してくれるので、具体的にわかりやすいのが特徴です。表紙の猫の由来は不明であると、まえがきにありました。

全国の大学1年生にすすめる戸田山先生の本です。書棚にはあったもの実際にはあまり参照しませんでしたが、科学哲学に関心がある人はここから入るといいと思います。

京大の内井先生の本です。こちらはかなり読み込みました。章立ての順番が個人的には少し読みにくい&索引が丁寧ではないところが院試対策として使う分には難点ですが、内井先生のウェブサイトの中の検索しそれを補うことでかなり使い勝手がよくなります。

Google検索にはヒットしにくい&先生が京大を退官なさり、リンク先が一部混乱しておりますがwebarchiveを駆使しながら本と合わせて先生の議論を追うとかなり勉強になります。内容は日本語英語混在です。

科学史のところに載せてもよかったのですが、各地域の文化と科学の比較や、科学の誕生とは?みたいな思弁的な議論も多く”科学論”という感じがするのでこちらに。古代文明の暦の話や、ニーダムの文化の滴定の話がでてきます。

古い本ですが。図書館で借りて読んだら、父がまるっきり同じものを持っていました。映画の代わりに読めるような薄い本なので、高速でおさらいしたり、これに反論するように議論を組み立てる練習をしたりするのによいです。

これは結局読みかけです。和訳版もあるはずです。
とくに理系の人におすすめです。わかりやすい。かんたんな入門書ですが、筆者はラカトシュ賞(LSE?でやってる科学哲学の研究者に送られる賞。ソーバーもA.ローゼンバーグも受賞している。ハッキングはたしかしてない。)も受賞した超一流です。同シリーズのHistory of Medicineもおすすめです。今度、History of Chemistryもでるそうです。(しかし、History of Scienceはまだありません。)

科学技術社会論科学社会学

藤垣先生の名著。同著「科学技術社会論の技法」がケースステディー中心+後半にワードリストなのに対し、こちらは理論的です。(サムネこわれてますね)

こちらは文学部の松本先生(たしか、もう退官されてしまった?)の科学社会学の著作。廣重説とマートン説を比較検討してくれるので、頭のなかがごっちゃになってしまった時に助けになります。

2020.6.追記
科学技術社会論の挑戦シリーズ

東大出版より。1冊目である「科学技術社会論とは何か」のみすでに発売済み。STSの概観とその周縁領域をとらえるのによいと思います。

心の哲学

すごい良い本だと思います。メンタルヘルス当事者研究をしている観点から書かれた一冊です。ところどころ科学哲学的な内容にもふれながら進みます。

索引が親切設計では(解説文中のこまかい用語をひろていない)ありません。なので一度通読して、どこになにが書いてあるかかなりしっかりめに把握しておく必要があります。しかしながら、内容が網羅的で用語説明問題の対策に適しています。

院試のために読んだわけではないですが、心の哲学に関係する部分も多いので入門にはいいんじゃないでしょうか。

院試対策とは関係なく読んでおいてよかった本

ハッキングの統計学史です。
ライプニッツの確率論などがわかるだけでなく、ハッキング自身の操作的な科学観も最後の付録でかんたんに説明されているのでおすすめです。(というか、それを読んでから本文を読むことをおすすめします。)(表現と介入もおすすめです。)

ちょうどフーコーと同時代の医学史の研究者によって書かれた本です。

新技術に対するハイプに批判的でありながら、将来の医療(技術)に希望を持ち続ける著者の姿勢が僕はかなり好きです。診断に限った話ですが、コンピューター出現までの医療技術史(および、疾病観と医者の医学史)をおさらいすることできます。

コリンズはあまりちゃんと読んだわけではないですが、、、

2020.6.追記 コリンズの代表作『専門知を再考する』が名古屋大学出版より邦訳が出版されました。

口頭試験の前に対策で呼んだ本

ぜひご自身の専門、卒論の内容と合致するものを読んでください。

僕の場合はHistory and Sociology of Human/Health Science(とくに情報に着目して)、みたいなことを勉強したかったので以下を読みました。

フーコー(初期)です。正直僕はめっちゃ読みにくいと思っています。

最近話題のシャマユーです。フーコーの議論を一度ばらしてLEGOの別の説明書見ながら組み立て直すみたいな印象です。常識的ではない分厚さなのですが、1/3ぐらいがレファレンスと索引で、すばらしいです。

技術系に人気のフロリディです。パースの研究出身の科学哲学者。専門は情報の倫理です。論文の生産ペースが異常に早いです。

フェルベーク。ポスト現象学出生前診断のイントロの書き方が読者を惹きつけます。

勉強する上でおすすめのウェブサイト

晩年、中山茂先生が研究活動をインターネットインフラに依存した”デジタルヒストリアン”になれるかなれないかというブログを書かれておりました。

研究活動はわかりませんが、院試の対策はかなりウェブ上でがんばれます。大学のレポジトリ、Researchmap、研究者のブログなどからかなりの部分の情報(論文、書評、志望する教授の取り組んでいる科研費、正誤表)を自宅の回線からでも仕入れることができます。(大学のレポジトリやOCWを確認する際は、前任校もあわせて確認することをおすすめいたします。)(具体的には、いまは京大の伊勢田先生の授業のレジュメが名古屋大学のOCWにあったりします。)また参考書を探すだけであればオンラインシラバス(授業カタログ)なども使えます。

http://tiseda.sakura.ne.jp/PofSbookguide.html

京都大学の伊勢田先生による(日本語で読める)科学哲学のブックガイド。

科博の有賀先生によるウェブサイト。写真付きの人物紹介など面白いです。有賀先生はResearchmap上で、科博にて一般向けに開催されている科学史の入門講座のレジュメも公開してくださっています。そちらにのっている参考書籍も参照するとよいのではないでしょうか。

隠岐さや香先生の前任の成定薫先生のホームページ。見やすいです。

東工大の中島先生のホームページ、どちらかというと技術史よりです。過去東工大の授業でだした過去問などのウェブ内を探すとのっています。ホイットニーの設問が多いですね。

年表です。あると便利です。思想史の中の科学の末尾についている年表でもいいと思います。

shorebirdさんのブログ。進化理論の授業で教えていただきました。ちょくちょく科学哲学の話題や、進化論の論争などがわかりやすく紹介されています。

阪大医療人類学の池田先生のウェブサイト。高校生のころ大変お世話になりました。医療に関することであれば。

京都大学にてベンタムの研究をしている児玉先生の倫理学用語集。辞書のかわりに使うことはできません(語句説明というよりも、それに関するコメントや発言みたいなものも多いので)が、とっさの確認に役立ちます。

http://tanemura.la.coocan.jp/review5.html

北大CoSTEPの種村先生の科学技術倫理用語集。

出版社にお勤めの丸山さんのブログ。

これはなんなんでしょうか。用語集です。
「科学と社会」の中のSTS科学史の項目は多くを、東工大の中島先生が手掛けております。

STS、科学論のブックガイドです。

また東大の有志の学生が作成した橋本科学史シケプリや哲学、野矢論理学のシケプリもあるようです。

こまったらこれを見ればかなりの部分が解決します。日英の用語の対応さえなんとなく把握できれば使いやすいです。Pseudoscienceや心の哲学、認識論関連のページを読むといいと思います。

余談

NHKの科学技術史の番組です。
一般向けにもわかりやすくある科学者のストーリーに着目しており、母もお気に入りの番組です。個人的に好きな回は、麻酔とクオンツマリー・キュリーの回です。院試対策という観点からだと、見て損になる回はあまりないです。

吉川晃司のナレーションがおどろおどろしくてかなり良いです。メインテーマのギターインストも、かっこいい。


実際、今回は勉強の大部分をインターネットと地元の公共図書館に依存しました。インターネットはともかく( site:ac.jpなどの検索記号を使えば情報の精度もわりと確保できる)、図書館ってすごいですね。きちんと使うことができれば院試に受かるぐらい=大卒程度?ぐらいまでの知識をサポートしてくれるんですね。

(まったくの雑談ですが、社会疫学や公衆衛生系をインターネット上で勉強したいという人は、京大のOCW修士1年生向けのものが個人的にはおすすめです。)(東大に関しては自分で授業のレジュメの現物をもっているためインターネット上で探そうと思ったことがありません。)(科学哲学と疫学は、統計学の哲学←→因果推論、リスク論←→栄養疫学、薬理毒性学、こころの哲学←→精神医学、精神看護学実在論←→医療コミュニケーションみたいに名前は違うけど対応しているものも多いなぁと勉強していて思いました。)