Qualities of ナスノ

Grad student of History and Philosophy of Science, Bachelor of Public Health with emphasis on Bioethics. 医療とか情報にまつわる制度。情報の哲学を趣味にする。http://komad.tokyo/ は社会貢献

「医療・医学は特殊だから」で立ち止まってはいけない(とりわけ科学技術論やりたい方は)

『CARE & CURE』(医療/医学の哲学入門)の書評を書きました

ケンブリッジの若手科学哲学者Stegengaによる、科学哲学の視点からの「医療・医学哲学」の入門書である『CARE & CURE』の書評を書きました。東大は文学部の有志の方々による新しい取り組みである、人文×社会投稿しました。ご高覧ください。

人文学は医療・医学に貢献できるのか――書評: Jacob Stegenga, Care & Cure: An Introduction to Philosophy of Medicine, The University of Chicago Press, 2018.

内容をざっと確認したい方向けにおわりに章項目の和訳だけおいておきます。(より適切な訳語をご存知の方いたら教えていただければ幸いです。)

余談ですが、Chap12のクイズが難しいです。


さて、タイトルについて解説します。医療と医学が話題です。連日感染者数やワクチンの話をしているニュース番組だけではなく、学会でも医療と医学に関係する話が多いです。とりわけ僕が参加するような科学史・科学哲学・科学技術社会論・科学コミュニケーションでは顕著です。

しかしながら、医療・医学について議論するときにはあるハードルがあります。とくにビジネスシーンで多い言い回しですが、アカデミックなお話でもしばしば見かけます。それは「医療・医学は特殊だから」です。ヘルスケアは特殊なビジネスだから○○。医学は特殊な学問だから○○。しばしばこのような論法で、医療・医学は議論の射程から漏れてしまったり、あるいは他テーマから地続きの議論が困難になったりします。

僕も「医療・医学は特殊だから」には同意します。しかし、本書の書評を書くに至った理由は、その「特殊だから」を議論の区切れ目にするのではなく、議論をステップアップ・ブラッシュアップするための足がかりにしてほしいと考えるからです。本書は、とりわけ科学技術論における「医療・医学は特殊だから」という議論を交通整理し、重要なポイントを見極めるために役立つと思います。

内容は”哲学”でこそありますが、とても平易な英語で書かれたわかりやすい入門的概説書です。分野に関心がある方はぜひ。


Chapter 1. Health/健康
1 Summary
1.2 Neutralism and Naturalism/中立主義(中立説)と自然主義
1.3 Well-Being and Normativism/ウェルビーイング主義(ウェルビーイング論)と規範主義
1.4 Objectivism and Subjectivism/客観主義と主観主義
Further Reading and Discussion Questions

Chapter 2. Disease/病
2.1 Summary
2.2 Naturalism/自然主義
2.3 Normativism/規範主義
2.4 Hybridism/両立主義
2.5 Eliminativism/消去主義
2.6 Phenomenology/現象学
Further Reading and Discussion Questions

Chapter 3. Death/死
3.1 Summary
3.2 Defining Death/死を定義する
3.3 The Badness of Death/死の悪さ
3.4 Ethics of Killing/殺すことの倫理
Further Reading and Discussion Questions

Part II. Models and Kinds/モデルと種

Chapter 4. Causation and Kinds/因果と種
4.1 Summary
4.2 Three Theories of Causation/因果の3つの理論
4.3 Diseases: Monocausal or Multifactorial?/病:単一因子や複数因子か
4.4 Nosology/疾病分類学
4.5 Precision Medicine/プリシジョンメディシン
Further Reading and Discussion Questions

Chapter 5. Holism and Reductionism/ホーリズムと還元主義
5.1 Summary
5.2 Disease/病
5.3 Medical Interventions/医療の介入
5.4 Patient-Physician Relationship/患者医師関係(医師患者関係)
Further Reading and Discussion Questions

Chapter 6. Controversial Diseases/論争をよぶ病
6.1 Summary
6.2 Medicalization/医療化
6.3 Psychiatric Diseases/精神医学における病
6.4 Culture-Bound Syndromes/文化依存症候群
6.5 Addiction/中毒
Further Reading and Discussion Questions

Part III. Evidence and Inference/エビデンスと推論

Chapter 7. Evidence in Medicine/医学(医療)における証拠(エビデンス)
7.1 Summary
7.2 Phases of Medical Research/医学研究のフェイズ
7.3 Bias/バイアス
7.4 Animal Models/動物モデル
7.5 Randomization/ランダム化
7.6 Meta-analysis/メタアナリシス
7.7 Mechanisms/メカニズム(機構)
Further Reading and Discussion Questions

Chapter 8. Objectivity and the Social Structure of Science/客観性と科学の社会的構造
8.1 Summary
8.2 Industry Funding and Publication Bias/産業からのファンディング(資金調達)と出版バイアス
8.3 Demarcation/線引き(線引き問題)
8.4 Value-Laden Science/価値負荷的な科学(価値を含んでいる科学)
8.5 Social Epistemology/社会認識論
Further Reading and Discussion Questions

Chapter 9. Inference/推論
9.1 Summary
9.2 Causal Inference/因果推論
9.3 Extrapolation/説明
9.4 Measuring Effectiveness/効果測定
9.5 Theories of Statistical Inference/統計的推論の理論
9.6 Testing Precision Medicine/プリシジョン・メディシンを検討する
Further Reading and Discussion Questions

Chapter 10. Effectiveness, Skepticism, and Alternatives/効果、懐疑主義、代替(代替医療)
10.1 Summary
10.2 Defining Effectiveness/効果(効果量)を定義する
10.3 Medical Nihilism/医療ニヒリズム
10.4 Alternative Medicine/代替医療
10.5 Placebo/プラセボ
Further Reading and Discussion Questions

Chapter 11. Diagnosis and Screening/診断とスクリーニング
11.1 Summary
11.2 Diagnosis/診断
11.3 Logic of Diagnostic Tests/診断用検査の論理
11.4 Screening/スクリーニング
Further Reading and Discussion Questions

Part IV. Values and Policy/価値(価値観)と政策

Chapter 12. Psychiatry: Care or Control?/精神医学:ケアか制御か
12.1 Summary
12.2 Psychiatric Nosology/精神医学の疾病分類学
12.3 Anti-psychiatry/反精神医学
12.4 Delusions and Exclusions/妄想と除外
Further Reading and Discussion Questions

Chapter 13. Policy/政策
13.1 Summary
13.2 Research Priorities/研究の優先順位
13.3 Intellectual Property/知的財産
13.4 Standards for Regulation/規制のための規準
Further Reading and Discussion Questions

Chapter 14. Public Health/公衆衛生(公共健康)
14.1 Summary
14.2 Social Epidemiology/社会疫学
14.3 Preventive Medicine/予防医学
14.4 Health Inequalities/健康の不平等(健康格差)
Further Reading and Discussion Question


書影

感染症の歴史を1から学ぶための本の紹介

ペスト、新型コロナウイルスからマラリア等の寄生虫、コレラ、都市計画、ワクチンまで幅広く

公衆衛生史を研究していると、昨今の新型コロナウイルスの状況を鑑みて、友人等からコメントや教えを求められることも多いです。僕が感染症の歴史について勉強していく上で参考にした文献を紹介いたします。

僕が大学院で専門としているのは、公衆衛生史の中でもとくに20世紀,21世紀の医療情報学(の科学技術社会論)なので、感染症の歴史はあまりメインではないです。アメリカのBioSense等の議論で感染症を扱わないことはないのですが。
https://sites.google.com/view/fnasuno/

高校生、大学生が感染症関係・新型コロナ関係でレポートを書く時の参考や夏休みのお供にしてもらえるといいかなと思っています。


はじめに読むと良いもの

1.世界史の観点から

石 弘之, 感染症の世界史

朝日新聞のジャーナリストと東大の国際環境学の教授を歴任された方による、感染症の世界史を通じて現代にまでつながる問題を認識する著作です。感染症と人類の歴史というと「勝利主義的」な、人類学がウイルスに勝利する、という物語が語られがちですが、本著は意識的そういった事例を避けて、ウイルスと人間の共生という環境学的なテーマから書かれています。

サンドラ・ヘンペル, ビジュアル パンデミック・マップ 伝染病の起源・拡大・根絶の歴史

ナショナルジオグラフィックから発売された、いわば図解 感染症の歴史です。インフルや天然痘などの空気感染症、コレラなどの水系感染症、マラリアなどの動物由来感染症、HIV や梅毒といったヒト-ヒト感染症という分類に基づいて、重要どころの感染症を中心に、その病気に関するデータや写真、歴史的な変遷をまとめた一冊です。ぜひ家に1冊。

2.日本史の観点から

飯島 渉, 歴史総合パートナーズ 4 感染症と私たちの歴史・これから

日本史には大仏建立の理由や偉人の死因など、たびたび「病い」「疫病」が登場しますが、意外とそれについて掘り下げられることはありません。本著はその隙間を埋める1冊です。日本史は身近な方も多いので、読みやすいのではないでしょうか。

いずれも高校レベルの歴史、生物学・医学の知識があれば読めるようになっている入門書・一般書になります。とくに飯島先生の文献は、高校の日本史の授業の副読本として作られたものです。

歴史のなかではたびたび疫病が現れたり、現代社会でも定期的に新型インフルエンザのようなことが問題になったりします。ここではじめに紹介した文献は、感染症に関する教養を身につけるだけでなく、感染症に対する視座を”歴史化”するために役立つものだと思います。


少し踏み込んだ知識~レポートなどの参考に~

1.歴史家による、ある感染症に着目したエピソード

村上陽一郎, ペスト大流行: ヨーロッパ中世の崩壊

14世紀ヨーロッパにとって大きな衝撃となった「黒死病」の大流行と、その多大なる影響を描いた一冊です。古い本ですが、最近いろいろあって売れたようです。

アルフレッド・W・クロスビー, 史上最悪のインフルエンザーー忘れられたパンデミック

クロスビーは数量化の歴史で有名ですが、インフルエンザに関する歴史書もあります。1918年のWW1とともに起きたインフルエンザの流行に関する著作。

2.感染症と人類の歴史(&日本史、世界史以外の歴史)

ウィリアム・H・マクニール, 疫病と世界史

マクニール史観とまで呼ばれることすらある、感染症の歴史に関する決定的な著作です。人類の歴史を国家や人間社会によるものだけでなく、疫病もそれを形作る大きな影響力を持つものとして世界史を描いた著作です。

飯島渉, 感染症の中国史 公衆衛生と東アジア

科目的な「世界史」、「日本史」という区分だけではグローバルな歴史について十分に語りきれるとは言えません。飯島先生のこの中国史の著作は、そういった意味で読む価値のある著作です。

加藤 茂孝, 人類と感染症の歴史 & 続・人類と感染症の歴史 新たな恐怖に備える

国立感染症研究所やCDCにいらした加藤先生による、ウイルス学者の視点からの歴史をふまえた概説書です。先述のナショジオの「パンデミック・マップ」を補完する、さらに詳しいものになります。「続」に含まれる実際にCDCにいらした時に、SARSをめぐってどのように動いたのか、緊張感のあるドキュメンタリーが読み応えがあります。

学術書ではないけどおもしろい本

1.小説(フィクション含む)

コニー・ウィリス, ドゥームズデイブック

感染症の勉強には全然ならないのですが、本当に面白くて大好きなSFシリーズなのでおすすめします。タイムトラベル実用化後のオックスフォードの歴史学科の学生が、ペスト時代のヨーロッパに現”時”調査に向かう物語です。ペストや破傷風など、様々な感染症が物語を彩るアクターとして登場します。

川端裕人, エピデミック

科学フィクション(SFではない)の名手であり、科学コミュニケーション的・教育的にも重要な著作を多数書かれている川端裕人さんによるフィールド疫学者を主人公にした感染症もの小説です。古典的な感染症パニックもの×ハウダニット型探偵もののプロットを意識しつつも、感染症研究者及び疫学者への入念な取材にもとづいた医学・医療現場・行政・メディアのリアリティーある転回から目が離せない素晴らしい小説です。あとがきを読むと、取材に協力してくださった疫学者・ウイルス学者の皆様が、新型コロナウイルス対策の中心的な役割を果たしてくださっていることに気づきます。コニー・ウィリスのSFとは一変して、こちらは感染症や疫学を勉強するまえの導入としても最適です。

関連する分野の概説書・入門書

1.国際保健(グローバルヘルス)・公衆衛生と感染症

ピーター ・J・ ホッテズ, 顧みられない熱帯病: グローバルヘルスへの挑戦

感染症は熱帯地域に限定された問題や歴史的に過ぎていった過去の問題ではなく、現在進行系で公衆衛生・グローバルヘルスにおいて重大な問題です。本著は、長崎大の北先生やGHITスリングスビーさんなどによる、その問題を理解するための一冊です。

詫摩 佳代, 人類と病-国際政治から見る感染症と健康格差

最近でた本で僕はまだ読んでいないのですが、読んだ友人曰く勉強になったとのことでした。WHOは天然痘、ポリオ、マラリアと根絶・対策プログラムを世界的に手動しており、当然それは医療の問題であると同時に国際政治の問題となります。

2.医学史/医療史と公衆衛生

ウィリアム・バイナム, 医学の歴史 (サイエンス・パレット)

医学の歴史の中でも感染症は超重要キャラなので何度も登場します。とくにジョン・スノウによるコレラの感染メカニズムがわからない中での対策の様子や、ゼンメルワイスとリスターの手指消毒の話は新型コロナウイルス感染に関するウェブ記事でも何度も触れられた有名エピソードです。詳しくは本著に「都市の医学」や「コミュニティの医学」という観点から貧困の話や都市計画の話と交えて説明されています。

感染症史に関係する専門書(やや難しい)

見市雅俊ら, 疾病・開発・帝国医療―アジアにおける病気と医療の歴史学

日本や台湾におけるマラリア対策史や、伝染病研究における寄生虫の位置付けと日台関係等が大変に興味深かったです。

見市雅俊, コレラの世界史

感染症と法の社会史 — 病がつくる社会

法哲学会奨励賞を受賞した著作です。(ちゃんと読んでません……読まなくてわ……)

Bruce M. S. Campbell , The Great Transition: Climate, Disease And Society In The Late Medieval World

僕も流し読みしかしていないのですが、かんたんに言えば村上陽一郎先生の著作にもある14世紀黒死病の流行をケースに、石先生のような環境学的なウイルスと人間の共生という視点をさらに発展させ、経済・自然環境・生物環境の複合体の歴史を、極めて実証的な方法で歴史研究した1冊であると言えます。極めて実証的とはどういうことかと言うと、環境史や分子生物学の手法を駆使しながら歴史に迫るということです。手法としては日本語による歴史研究に間違いなく入ってくると思うのですが、日本語訳がでるかどうかはこの分野(中世ヨーロッパ・ユーラシア大陸史)に詳しくないのでわかりません。

いつもどおりにエンジョイできるような夏休みにはならないとは思いますが、その代わりに充実した読書時間・勉強時間を過ごせることを願います。

どの本も値段以上の価値があるものばかりです。せっかくなのでこの機会にどうでしょうか。


サムネイル用に表紙まとめた画像

一ヶ月で対策した東大総合文化研究科 科学史科学哲学の院試

他専攻からの受験はわりと無理があったので、非推奨です。*追記訂正有:受験直後の疲れから非推奨と言った私が愚かでした。推奨します。 

勉強のスタート地点

駒場(大学1,2年)にて科学史(橋本 東大)、哲学1(石原 東大)、科学技術社会論(調 東工大)を履修済み。・3,4年時は医学部健康総合科学科にて生物統計・疫学・公衆衛生系を中心にした授業。生命倫理教室所属。・院向けの科学史(岡本 東大)に潜ったり、Visitingでスウェーデンよりいらしてたノーベル賞科学史(Lindqvist ノーベル博物館初代館長)、科学技術人類学(福島 東大)、他情報倫理やロボット倫理、進化理論などのの授業を他学部履修していました。・どこの院に進むかはギリギリまで(というか今でも)悩んでました。


勉強をはじめるにあたって参考にしたサイト

これらのサイトがあったから、外部からの受験でもあわてて対策できたようなものです。感謝。
感謝の念を示すために(そして後進が困らないように)、この記事をまとめました。
(また、東京大学 大学院 総合文化研究科 広域科学専攻の過去問は語学を除き、ウェブサイト上にて入手可能です。)

 
 
 
 

この辺の本を近所の区立図書館で借りて読みました。

対策したこと

以下の本を図書館で借りる、実際に買うなどして周回して読んでは、過去問とにらめっこしながら索引を使って完璧な模範解答を作成することに勤しみました。似た傾向の問題がいくつかでるので、そういう時はついでに過去ものもブラッシュアップしていきました。志望は東大一本だったので、実際に所属されてる教員の著作・論文に多数あたりました。

過去問を見て、「これは間違いなく退任された○○先生の出題では?」という問題については対策を見送りました。

英語はちょうど7月の冒頭にTOEFLを受けていた(そのせいでそもそも対策の時間がなかった。)ので、TOEFLitpも出題が同じだろうとたかをくくりました。(そして、当日おどろくことになります。)

2019年11月 ふと思ったので追記。
実は東大総合文化の広域科学科の試験問題は選択式で科学史科学哲学の他に生物学や物理学の問題も出ます。僕のように、いわゆる理系から受験するような人は、そっちが得意ならそっちを解くという選択肢もあります。(僕の場合は、もし選択するとしたら遺伝学と細胞構造に関係するあたりですかね。しっかり健総の授業でやったことがでます。植物とかは全然わからないですが。)しかしながら、おそらく点数一辺倒な選考をするところではないので、それがどう二次の面接に響くかは正直わかりません。
2020.6. さらにふと思ったので追記
科史科哲の院生の同級生には、文/理・実験 /理論問わず他専攻出身の人や他大学出身の人も多く、言うほど他専攻から受験は無理ではないようです。さらに孤独にやってた僕が変わり者だったようで、説明会であった院生や同じ専攻を目指すお友達と勉強する人が多いようです。

科学史について
図説 科学史入門 *1
Amazonで橋本 毅彦の図説 科学史入門 *2。アマゾンならポイント還元本が多数。橋本 毅彦作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お届けも可能。また図説 科学史入門 ((ちくま新書…www.amazon.co.jp 

橋本先生の通史の科学史2冊。前者は、放送大学の元教科書ということもあり入門書として最適です。
後者は、図表に着目するという結果ちょっと視点がことなる歴史が入ってくるので併読し、科学史上の理論・モデルを理解する助けになります。

こちらは少し技術史よりです。全編が橋本先生というではなく、廣野先生の食品・水銀規制や岡本先生の原子力規制の話ものっています。STSの知識がすこしあるほうが読みやすいかもです。

必修と被って古川先生の授業を受けられなかったことが残念です。
18世紀、19世紀の科学と社会(具体的には、ヨーロッパの大学、産業、政府)を知るに最適の本です。索引が使いやすいです。廣重先生の同名の著作があります。ドイツの科学史大事。

東大岡本先生の日本の科学史、科学行政史の教科書です。明治期の話などとても面白いです。この本、めっちゃ面白いのでおすすめです。高校生のときにこれ呼んでたら、地理じゃなくて日本史選択にしてたかもです。

生命科学・生物学・医学の歴史を勉強するのには、この書籍の前半の廣野先生担当部分が大変よいです。

また後半の優生学史や環境思想史も初学者には必読です。進化理論、進化学については別書を参照してください。長谷川先生の進化心理学の書籍など良いと思います。

慶應鈴木先生の医学史です。新著でこのまま出してもいいんじゃないかというWeb連載です。ウィルヒョーやコッホのような医学史のメインどころの記述は軽めなので、(もし医術史、医学史に関心があるのならば)それについては他の書籍をあわせて読むことをおすすめします。

科学論・科学哲学

チャルマーズのかわいい猫ちゃんの本です。ものすごく科学史上の論争を引いて議論の展開を説明してくれるので、具体的にわかりやすいのが特徴です。表紙の猫の由来は不明であると、まえがきにありました。

全国の大学1年生にすすめる戸田山先生の本です。書棚にはあったもの実際にはあまり参照しませんでしたが、科学哲学に関心がある人はここから入るといいと思います。

京大の内井先生の本です。こちらはかなり読み込みました。章立ての順番が個人的には少し読みにくい&索引が丁寧ではないところが院試対策として使う分には難点ですが、内井先生のウェブサイトの中の検索しそれを補うことでかなり使い勝手がよくなります。

Google検索にはヒットしにくい&先生が京大を退官なさり、リンク先が一部混乱しておりますがwebarchiveを駆使しながら本と合わせて先生の議論を追うとかなり勉強になります。内容は日本語英語混在です。

科学史のところに載せてもよかったのですが、各地域の文化と科学の比較や、科学の誕生とは?みたいな思弁的な議論も多く”科学論”という感じがするのでこちらに。古代文明の暦の話や、ニーダムの文化の滴定の話がでてきます。

古い本ですが。図書館で借りて読んだら、父がまるっきり同じものを持っていました。映画の代わりに読めるような薄い本なので、高速でおさらいしたり、これに反論するように議論を組み立てる練習をしたりするのによいです。

これは結局読みかけです。和訳版もあるはずです。
とくに理系の人におすすめです。わかりやすい。かんたんな入門書ですが、筆者はラカトシュ賞(LSE?でやってる科学哲学の研究者に送られる賞。ソーバーもA.ローゼンバーグも受賞している。ハッキングはたしかしてない。)も受賞した超一流です。同シリーズのHistory of Medicineもおすすめです。今度、History of Chemistryもでるそうです。(しかし、History of Scienceはまだありません。)

科学技術社会論科学社会学

藤垣先生の名著。同著「科学技術社会論の技法」がケースステディー中心+後半にワードリストなのに対し、こちらは理論的です。(サムネこわれてますね)

こちらは文学部の松本先生(たしか、もう退官されてしまった?)の科学社会学の著作。廣重説とマートン説を比較検討してくれるので、頭のなかがごっちゃになってしまった時に助けになります。

2020.6.追記
科学技術社会論の挑戦シリーズ

東大出版より。1冊目である「科学技術社会論とは何か」のみすでに発売済み。STSの概観とその周縁領域をとらえるのによいと思います。

心の哲学

すごい良い本だと思います。メンタルヘルス当事者研究をしている観点から書かれた一冊です。ところどころ科学哲学的な内容にもふれながら進みます。

索引が親切設計では(解説文中のこまかい用語をひろていない)ありません。なので一度通読して、どこになにが書いてあるかかなりしっかりめに把握しておく必要があります。しかしながら、内容が網羅的で用語説明問題の対策に適しています。

院試のために読んだわけではないですが、心の哲学に関係する部分も多いので入門にはいいんじゃないでしょうか。

院試対策とは関係なく読んでおいてよかった本

ハッキングの統計学史です。
ライプニッツの確率論などがわかるだけでなく、ハッキング自身の操作的な科学観も最後の付録でかんたんに説明されているのでおすすめです。(というか、それを読んでから本文を読むことをおすすめします。)(表現と介入もおすすめです。)

ちょうどフーコーと同時代の医学史の研究者によって書かれた本です。

新技術に対するハイプに批判的でありながら、将来の医療(技術)に希望を持ち続ける著者の姿勢が僕はかなり好きです。診断に限った話ですが、コンピューター出現までの医療技術史(および、疾病観と医者の医学史)をおさらいすることできます。

コリンズはあまりちゃんと読んだわけではないですが、、、

2020.6.追記 コリンズの代表作『専門知を再考する』が名古屋大学出版より邦訳が出版されました。

口頭試験の前に対策で呼んだ本

ぜひご自身の専門、卒論の内容と合致するものを読んでください。

僕の場合はHistory and Sociology of Human/Health Science(とくに情報に着目して)、みたいなことを勉強したかったので以下を読みました。

フーコー(初期)です。正直僕はめっちゃ読みにくいと思っています。

最近話題のシャマユーです。フーコーの議論を一度ばらしてLEGOの別の説明書見ながら組み立て直すみたいな印象です。常識的ではない分厚さなのですが、1/3ぐらいがレファレンスと索引で、すばらしいです。

技術系に人気のフロリディです。パースの研究出身の科学哲学者。専門は情報の倫理です。論文の生産ペースが異常に早いです。

フェルベーク。ポスト現象学出生前診断のイントロの書き方が読者を惹きつけます。

勉強する上でおすすめのウェブサイト

晩年、中山茂先生が研究活動をインターネットインフラに依存した”デジタルヒストリアン”になれるかなれないかというブログを書かれておりました。

研究活動はわかりませんが、院試の対策はかなりウェブ上でがんばれます。大学のレポジトリ、Researchmap、研究者のブログなどからかなりの部分の情報(論文、書評、志望する教授の取り組んでいる科研費、正誤表)を自宅の回線からでも仕入れることができます。(大学のレポジトリやOCWを確認する際は、前任校もあわせて確認することをおすすめいたします。)(具体的には、いまは京大の伊勢田先生の授業のレジュメが名古屋大学のOCWにあったりします。)また参考書を探すだけであればオンラインシラバス(授業カタログ)なども使えます。

http://tiseda.sakura.ne.jp/PofSbookguide.html

京都大学の伊勢田先生による(日本語で読める)科学哲学のブックガイド。

科博の有賀先生によるウェブサイト。写真付きの人物紹介など面白いです。有賀先生はResearchmap上で、科博にて一般向けに開催されている科学史の入門講座のレジュメも公開してくださっています。そちらにのっている参考書籍も参照するとよいのではないでしょうか。

隠岐さや香先生の前任の成定薫先生のホームページ。見やすいです。

東工大の中島先生のホームページ、どちらかというと技術史よりです。過去東工大の授業でだした過去問などのウェブ内を探すとのっています。ホイットニーの設問が多いですね。

年表です。あると便利です。思想史の中の科学の末尾についている年表でもいいと思います。

shorebirdさんのブログ。進化理論の授業で教えていただきました。ちょくちょく科学哲学の話題や、進化論の論争などがわかりやすく紹介されています。

阪大医療人類学の池田先生のウェブサイト。高校生のころ大変お世話になりました。医療に関することであれば。

京都大学にてベンタムの研究をしている児玉先生の倫理学用語集。辞書のかわりに使うことはできません(語句説明というよりも、それに関するコメントや発言みたいなものも多いので)が、とっさの確認に役立ちます。

http://tanemura.la.coocan.jp/review5.html

北大CoSTEPの種村先生の科学技術倫理用語集。

出版社にお勤めの丸山さんのブログ。

これはなんなんでしょうか。用語集です。
「科学と社会」の中のSTS科学史の項目は多くを、東工大の中島先生が手掛けております。

STS、科学論のブックガイドです。

また東大の有志の学生が作成した橋本科学史シケプリや哲学、野矢論理学のシケプリもあるようです。

こまったらこれを見ればかなりの部分が解決します。日英の用語の対応さえなんとなく把握できれば使いやすいです。Pseudoscienceや心の哲学、認識論関連のページを読むといいと思います。

余談

NHKの科学技術史の番組です。
一般向けにもわかりやすくある科学者のストーリーに着目しており、母もお気に入りの番組です。個人的に好きな回は、麻酔とクオンツマリー・キュリーの回です。院試対策という観点からだと、見て損になる回はあまりないです。

吉川晃司のナレーションがおどろおどろしくてかなり良いです。メインテーマのギターインストも、かっこいい。


実際、今回は勉強の大部分をインターネットと地元の公共図書館に依存しました。インターネットはともかく( site:ac.jpなどの検索記号を使えば情報の精度もわりと確保できる)、図書館ってすごいですね。きちんと使うことができれば院試に受かるぐらい=大卒程度?ぐらいまでの知識をサポートしてくれるんですね。

(まったくの雑談ですが、社会疫学や公衆衛生系をインターネット上で勉強したいという人は、京大のOCW修士1年生向けのものが個人的にはおすすめです。)(東大に関しては自分で授業のレジュメの現物をもっているためインターネット上で探そうと思ったことがありません。)(科学哲学と疫学は、統計学の哲学←→因果推論、リスク論←→栄養疫学、薬理毒性学、こころの哲学←→精神医学、精神看護学実在論←→医療コミュニケーションみたいに名前は違うけど対応しているものも多いなぁと勉強していて思いました。)